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日本形成外科学会 臨床研究・基礎研究の利益相反に関する指針

序論
 形成外科とは、身体に生じた組織の異常や変形、欠損、あるいは整容的な不満足に対して、あらゆる手法や特殊な技術を駆使し、機能のみならず形態的にもより正常に、より美しくすることによって、患者さんの生活の質'Quality of Life'の向上に貢献する、外科系の専門領域である。
 日本形成外科学会(以下、本学会と略す)が主催する学術集会や刊行物などで発表される研究成果には、各種の疾患を対象とした診断・治療・予防法開発のための臨床研究・基礎研究や、新規の医薬品・医療機器・医療技術を用いた研究が含まれており、その推進には産学連携による共同研究、受託研究、寄付金、寄付講座などが基盤となっている。
 産学連携による臨床研究・基礎研究が進み、大学や研究機関、学術団体などが特定の企業の活動に深く関与する結果、学術的・倫理的責任を果たす義務と、産学連携活動に伴って個人が得る利益が衝突・相反する状態が不可避的に発生する。この状態を「利益相反」と呼び、それを学術機関・団体が組織として適切に管理していくことが求められている。臨床研究・基礎研究に携わる者にとって、利益相反状態が深刻になればなるほど、研究の方法、データの解析、結果の解釈が歪められるおそれが生じる。また、適切な研究成果であるにもかかわらず、公正な評価がなされない事態も生じうる。過去の事例の多くは、産学連携に伴う利益相反状態そのものに問題があったのではなく、それを適切にマネージメントしていなかったことに問題があると指摘されている。
 本学会は会員に対して本学会事業での発表などで利益相反状態を一定要件のもとに開示させることにより、利益相反状態を適正にマネージメントし、産学連携による研究・開発の公正さを確保しつつ研究を積極的に推進するために利益相反指針を策定する。
1.目的
 臨床研究の原則については、「ヘルシンキ宣言」や「臨床研究の倫理指針(厚生労働省告示第255号、2008年度改訂)」において述べられているように、被験者の人権・生命を守り、安全に実施することに格別な配慮が求められる。本学会は、その活動において社会的責任と高度な倫理性が要求されていることに鑑み、臨床研究・基礎研究の利益相反に関する指針」(以下、本指針と略す)を策定する。本指針の目的は、本学会が会員などの利益相反状態を適切にマネージメントすることにより、研究成果の発表やそれらの普及・啓発などの活動を中立性と公明性を維持した状態で適正に推進させ、形成外科学に含まれる疾患の予防・診断・治療の進歩に貢献することにより社会的責務を果たすことにある。すなわち本指針は、本学会の会員に対して利益相反についての基本的な考えを示し、本学会の会員が各種事業に参加し発表する場合、自らの利益相反状態を自己申告によって適切に開示するとともに、本指針を遵守することを求める。
2.対象者
利益相反状態が生じる可能性がある以下の対象者に対し、本指針が適用される。
(1)本学会会員
(2)本学会の学術集会などで発表する者
(3)本学会の役員(理事長、理事、監事)、学術集会会長、各種委員会の委員長、
特定の委員会(学術集会プログラム委員会、専門医生涯教育委員会、機関誌編集委員会、ガイドライン作成部会、倫理委員会、利益相反部会、医療安全推進委員会など)委員、作業部会(小委員会、ワーキンググループなど)の委員
(4)本学会の事務職員
(5)1~4の対象者の配偶者、一親等の親族、または収入・財産を共有する者
3.対象となる活動
 本学会が関わるすべての事業活動に対して本指針を適用する。 とくに学術集会、支部例会での発表、学会機関誌、学術図書などでの発表、研究および調査の実施、研究の奨励および研究業績の表彰、診療ガイドラインの作成、国際的な研究協力の推進、臨時に設置される調査委員会、諮問委員会などでの作業を行う者には、本指針を遵守することが求められる。
4.開示すべき事項
利益相反状態が生じる可能性がある対象者は、個人における以下の(1)~(8)の事項で、別に細則で定める基準を超える場合には、その正確な状況を本学会理事長に申告し、開示する義務を負う。なお、申告された内容の具体的な開示、公開の方法については別に細則で定める。
(1)企業、営利を目的とする団体(以下企業・団体と略す)の役員、顧問職、社員
(2)企業の株の保有
(3)企業・団体からの特許権使用料
(4)企業・団体から、会議の出席(発表)に対し、研究者を拘束した時間・労力に対して
支払われた日当(講演料など)
(5)企業・団体がパンフレットなどの執筆に対して支払った原稿料
(6)企業・団体が提供する研究費(治験、臨床試験費、受託研究、共同研究、寄付金など)
(7)企業・団体がスポンサーとなる寄付講座
(8)その他、上記以外の旅費や贈答品
5.利益相反状態の回避
(1)全ての対象者が回避すべきこと
臨床研究・基礎研究の結果の公表や診療ガイドラインの作成などは、純粋に科学的な判断あるいは公共の利益に基づいて行われなければならない。本学会の会員は、研究結果とその解釈といった発表内容や、科学的な根拠に基づく診療ガイドラインなどの作成について、その研究の資金提供者の恣意的な意図に影響されてはならず、また影響を避けられないような契約を資金提供者と締結してはならない。
(2)臨床研究・基礎研究の試験責任者が回避すべきこと
研究(臨床試験,治験を含む)の計画・実施に決定権を持つ総括責任者には、下記の項目に関して重大な利益相反状態にない(依頼者との関係が少ない)者が選出されるべきであり、また選出後もその状態を維持すべきである。

1)研究を依頼する企業の株の保有
2)研究の結果から得られる製品・技術の特許料・特許権などの獲得
3)研究を依頼する企業・団体の役員、理事、顧問など(無償の科学的な顧問は除く)

但し、1)~3)に該当する研究者であっても、当該研究を計画・実行するうえで必要不可欠の人材であり、かつ当該研究が極めて重要な意義をもつような場合には、その判断と措置の公平性、公正性および透明性が明確に担保されるかぎり、当該研究の試験責任医師に就任することができる。
6.実施方法
(1)会員の責務
本学会の会員は研究成果を学術講演などで発表する場合、当該研究実施に関わる利益相反状態を、本学会の細則にしたがい、発表時に所定の様式で適切に開示する義務を負う。本指針に反する事態が指摘された場合は、利益相反を管轄する委員会(以下、利益相反部会と略す)が審議し、理事会に上申する。
(2)役員などの責務
本学会の役員(理事長、理事、監事)、学術集会会長、各種委員会委員長、特定の委員会委員、および作業部会の委員は本学会に関わるすべての事業活動に対して重要な役割と責務を担っており、当該事業に関わる利益相反状況について、就任した時点で所定の書式にしたがい自己申告を行なう義務を負う。就任後、新たに利益相反状態が発生した場合は規定にしたがい、修正申告を行わなければならない。
(3)利益相反部会の役割
利益相反部会は、本学会が行うすべての事業において、重大な利益相反状態が会員に生じた場合、あるいは、利益相反の自己申告が不適切で疑義があると指摘された場合、当該会員の利益相反状態をマネージメントするためにヒアリングなどの調査を行い、その結果を理事長に答申する。
(4)理事会の役割
理事会は、役員が本学会のすべての事業を遂行するうえで、深刻な利益相反状態が生じた場合、あるいは利益相反の自己申告が不適切であると認めた場合、利益相反部会に諮問し、答申に基づいて改善措置などを指示することができる。
(5)学術集会会長の役割
学術集会の担当責任者(会長)は、学会で臨床研究・基礎研究の成果が発表される場合には、その実施が本指針に沿ったものであることを検証し、本指針に反する演題については発表を差し止めることができる。この場合には、速やかに発表予定者に理由を付してその旨を通知する。なお、これらの対処については利益相反部会で審議し、その答申に基づいて理事会で承認後に実施する。
(6)機関誌編集委員会の役割
機関誌編集委員会は、学会機関誌などの刊行物で研究成果の原著論文、診療ガイドライン、などが発表される場合、その実施が本指針に沿ったものであることを検証し、本指針に反する場合には掲載を差し止めることができる。この場合、速やかに当該論文投稿者に理由を付してその旨を通知する。当該論文掲載後に本指針に反していることが判明した場合は、当該刊行物などに編集委員長名でその旨を公知することができる。なお、これらの対処については機関誌編集委員会委員長は利益相反部会に諮問し、その答申に基づいて理事会の承認を得て実施する。
(7)その他
その他の委員長・委員は、それぞれが関与する学会事業に関して、その実施が本指針に沿ったものであることを検証し、本指針に反する事態が生じた場合には、速やかに事態の改善策を検討する。なお、これらの対処については利益相反部会が審議し、答申に基づいて理事会の承認を得て実施する。
7.指針違反者に対する措置と説明責任
(1)指針違反者への措置
本学会理事会は、本指針に違反する行為に関して審議する権限を有し、倫理委員会、その他の該当する委員会に諮問し、答申を得たうえで、理事会で審議し、重大な遵守不履行があると判断した場合には、その違反の程度に応じて一定期間、次の措置を取ることができる。

1)本学会が開催するすべての学術集会での発表の禁止
2)本学会の刊行物への論文掲載の禁止
3)本学会の学術集会の会長就任の禁止
4)本学会の理事会、委員会、作業部会への参加の禁止
5)本学会の評議員の解任、あるいは評議員になることの禁止
6)本学会会員の資格停止、除名、あるいは入会の禁止

(2)不服の申し立て
被措置者は、本学会に対し、不服申し立てをすることができる。本学会の理事長は、これを受理した場合、速やかに利益相反問題審査委員会を設置して再審査を行い、その答申を理事会で審議したうえで、結果を被措置者に通知する。
(3)説明責任
本学会は、自らが関与する場所で発表された研究の成果について、本指針の遵守に大きな違反があると判断した場合は、理事会の審議を経て社会に対する説明責任を果たさなければならない。
8.細則の制定
本学会は、本学会の独自性、特殊性を考慮して本指針を実際に運用するために必要な細則を制定することができる。
9.指針の施行日および改正
本指針は2012年4月12日より施行する。本指針は、社会情勢の変化や産学連携に関する法令の改正などにより、定期的に見直しを行い、改正することができる。


日本形成外科学会臨床研究・基礎研究の利益相反の取扱いに関する細則 PDF  
様式1及び2 PDF  
様式3_役員などの利益相反自己申告書 PDF Word
日本形成外科学会会誌:自己申告による利益相反報告書 PDF Word
日本形成外科学会学術集会:自己申告による利益相反報告書 PDF Word

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