形成外科で扱う疾患


皮弁

1. 皮弁とは

皮弁とは、「血流のある皮膚・皮下組織や深部組織」を移植する手術方法です。英語では‘flap’と表現されます。文字通り「形を成し元通りに復元する」ことを目的とする形成再建外科分野では、最も重要な手術手技のひとつで、その歴史は古くインド造鼻法にまで遡ることができます。それが、20世紀に入り人体の皮膚血流の研究が進み、1970年代からはマイクロサージャリーの発展とあいまって目覚しく進歩しました。わが国の形成外科医の貢献も大きく、世界的に見てもトップレベルの技術を持っています。

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2. 皮弁の利点

皮弁では、付着した栄養血管を通じて豊富な血流があるため、移植先の状態が多少不良でも創治癒が早く、強度と柔軟性を兼ね備え、移植部への適合性も良好です。また、折り畳んだり、巻いたりすることができることからいろんな形態を形成できるようになりました。皮弁は、筋肉や筋膜を付着させる筋皮弁、筋膜皮弁の開発以降、さらなる改良が進んでいます。

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3. 手術方法(

さて、皮弁をどのように作成するかですが、あくまでも自分の組織を用います。したがって、拒否反応もなく最も確実な臓器移植ともいえます。しかし、自分の中に新たに皮弁採取のための傷をつけねばならず、また体の他の部分へ皮弁を移動するときに血管にダメージが加わり皮弁血流を損なってしまう場合もありえます。皮弁採取部位には、組織量が豊富で、太く血流の多い栄養血管が得られ、また採取後の傷跡も隠れやすい体幹部や大腿部がよく用いられます。特殊な組織を得たい場合は、その他の頭頚部や四肢から採取することもできます。いまや、骨、神経、腱、毛などさまざまな組織を組み合わせて皮弁を作成することができるようになっています。

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4. 皮弁を行う疾患

皮弁は、あらゆる部位の組織欠損を再建するのに適用できますが、中でもきわめて有効な場合があります。たとえば、顔面や喉の癌の切除後では顔面のえぐれを皮弁で充填するのみでなく、食べ物や空気の通り道を確保するという機能的役割も演じます。また、乳癌で乳房を失った場合でも、腹部の余分な脂肪を利用した筋皮弁で良好な形態の乳房を再建することができます。さらに最近では、手足の複雑な外傷や悪性腫瘍の切除後に対して、骨、筋肉、神経を付着した皮弁で運動機能の回復まで果たすこともできるようになっています。

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5. 皮弁による治療の進歩

このように皮弁は、失われた組織を再建する最良の方法のひとつですが、あくまでも皮弁採取部の犠牲が伴います。21世紀にはそれを克服する研究が進むでしょう。たとえば、最近注目の組織工学(必要な組織を作り出す技術)との連係があります。耳や鼻など形成外科での臨床応用が待たれます。また、親兄弟や他人から採取した皮弁や組織の移植(同種移植)が可能になると、小さな子供や広範囲の病気に対して大きな福音となるでしょう。形成外科医は、この方面でも日夜努力を続けています。

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