疾患紹介~こんな病気を治します!


縫縮、植皮、皮弁

縫縮

縫縮とは文字通り身体の欠損を縫い縮めることです。腫瘍やあざ、ほくろなどを切除した場合、または外傷などで皮膚・皮下組織の組織欠損が生じた場合にこれを修復する最も単純な方法が縫縮です。縫縮できるかどうかは周囲組織の余裕に影響されます。皮膚を楽につまめる部位は縫縮できる量も多くなります。一度で縫縮できない場合、

  • 何回かに分けて切除
  • 植皮術
  • 皮弁術
  • ティッシュー・エキスパンダー法

などの手段をとります。

形成外科の手術では、傷跡をできるだけ目立たなくするために様々な工夫をします。たとえば、縫縮した跡が残りにくいように切開線をしわの方向に合わせたり、縫縮の際に真皮縫合といって皮膚の深い部分にある真皮を縫合したりします(ただし、瞼・鼻・耳など真皮縫合を行わない部位もあります)。真皮縫合を行うことで、糸による「ムカデの足」のような縫い痕を少なくすることができます。

縫った傷は血液成分が糊のように働き、次第に線維組織が蓄積して傷口が補強されていきます。線維組織の蓄積は1-2か月続きますので、傷跡は縫った直後よりも、1-2カ月たった頃の方が硬くなり目立ってきます。その後に余分な線維組織が次第に吸収されていきますので、傷跡も一般的には半年から1年程度で自然に平らに軟らかくなっていきます。

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植皮

1.植皮とは

植皮とは、皮膚移植のことで、身体の他部位から皮膚を採取して、皮膚が欠損している部位に移植することです。移植した皮膚は4日程度で新しい血管が植皮片へ入り込み、約1週間程度で生着します。

2.植皮の種類

移植する皮膚の厚さにより2種類に分かれます。表皮と真皮を含んだ厚い全層植皮と、表皮と真皮の一部だけを含んだ薄い分層植皮です。
以下に分層植皮と全層植皮の簡単な比較表を示します。

  分層植皮 全層植皮
採皮片の厚さ 薄い 厚い
整容面 目立ちやすい 目立ちにくい
関節など可動部への移植 術後拘縮をきたしやすい 術後拘縮をきたしにくい
生着のしやすさ より生着しやすい やや生着しにくい
採取部位の状態 そのまま上皮化を待つ 縫縮
よく採取する部位 大腿、体幹 植皮部に近く皮膚に余裕のある部位
3.手術方法

全層植皮ではメスで、分層植皮では皮膚を剥ぐダーマトームなどの道具で皮膚を採取します。採取した皮膚は皮膚欠損部に縫いつけます。皮膚が生着するには皮膚と欠損部が密着してずれないことが必要です。そのため移植した皮膚の上にガーゼをおいて糸で固定し、皮膚と創部を密着させることもあります。また移植した部分が腕や足の場合には、ギプスやシーネを用いて安静を保ち、移植を行った皮膚がずれないようにすることもあります。手術後数日から1週間程度で、植皮部を開けてガーゼ交換をします。

植皮は術後数か月間で萎縮して皮膚が縮んできたり、色素沈着などを引き起こしたりする可能性があるため、圧迫や遮光などのアフターケアーが非常に重要となります。

4.植皮を行う疾患

熱傷や外傷による皮膚欠損、手術により組織を切除しそのまま縫縮できない場合など、皮膚が欠損したあらゆる部位に植皮は広く用いられます。しかし、腱や人工物が露出した部位など表面に血流が乏しい場合には植皮は不向きなため、より血流の安定した皮弁などを移植する必要があります。

5.植皮による合併症

移植した皮膚の下に血腫ができたり感染したりすると、植皮した皮膚の一部あるいは全部が壊死してしまうことがあります。また、移植した皮膚が色素沈着を起こしたり、植皮部周囲の瘢痕が盛り上がったりすることがあります。

6.その他

自分の皮膚を移植することが一般的ですが、全身熱傷などで免疫力が下がっている場合には、両親などの他人の皮膚を移植することがあります。さらに、本邦でも現在スキンバンクシステムが徐々に普及し、全身熱傷など自分の皮膚だけでは足りない場合には、予め他人から採取し冷凍保存しておいた皮膚(同種皮膚)を用いることもあります。

また、動物のコラーゲンなどから作製した人工真皮を補助的に利用することがあります。また小指大程度(1cm2大)の皮膚から大きな培養皮膚を作製して臨床応用しようという研究も進んでいます。

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皮弁

1.皮弁とは

皮弁とは、組織欠損を覆う手術で用いる「血流のある皮膚」のことです。血流の源は隣接する皮膚や皮下組織からのもの(局所皮弁、皮下茎皮弁)、直下の筋膜や筋肉からのもの(筋膜皮弁、筋皮弁)、皮膚自体を栄養する動脈からのもの(穿通枝皮弁)などがあります。また、1970年代からのマイクロサージャリーの発展により、血管吻合を伴った遊離皮弁が登場しました。これらの手技を駆使することでほぼすべての組織欠損に対する再建術の施行が可能となりました。

2.皮弁の利点

皮弁では、栄養血管を通じて豊富な血流があるため、移植先の血流の状態が多少不良でも創治癒が早く、強度と柔軟性を兼ね備え、移植部への適合性も良好です。また、折り畳んだり、巻いたりすることができることから様々な形態を形成可能です。

3.手術方法

皮弁の採取部位としては、組織量が豊富で、太く血流の多い栄養血管が得られ、また採取後の傷跡も隠れやすい体幹部や大腿部がよく用いられます。薄いものや、骨をつけたもののような特殊な組織を得たい場合は、その他の頭頚部や四肢から採取することもできます。いずれの場合においても、皮弁への血流を常に配慮し血流を阻害することなく移植床へ移動することが肝要となります。

4.皮弁移植術を行う疾患

皮弁は、あらゆる部位の組織欠損を再建するのに適用できますが、中でもきわめて有効な場合があります。たとえば、顔面やのどの癌の切除後では組織欠損を皮弁で充填するのみでなく、食べ物や空気の通り道を確保するという機能的役割も演じます。また、乳癌で乳房を失った場合でも、腹部の余分な脂肪を利用した皮弁で良好な形態の乳房を再建することができます。

さらに最近では、手足の複雑な外傷や悪性腫瘍の切除後に対して、骨、筋肉、神経を付着した皮弁で運動機能を回復させることや、感覚を伴う組織再建をも可能となっています。

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