

乳房再建とは、乳がんの治療によって失われた乳房の形態を手術によりできるだけ元の形に復元することを言います。 乳房再建の希望がある、または考えてみたいと思われる患者さんは乳がん手術前に乳腺外科の担当医に相談されるのがよいでしょう。
また、乳がん手術が終わった後に、乳房再建の話を聞いてみたい場合にもぜひ相談してください。形成外科医に直接相談されても良いです。形成外科医から乳腺外科の先生に連絡をとることもできます。ひとりで思い悩まないでぜひご相談ください。
ここ10年の間に、乳がんの手術方法が進歩し、私たち形成外科医はできるかぎり左右対称の乳房を再建することが可能になってきました。
乳房再建の時期は乳がんの手術の際に行う一次再建と、乳がん術後に行う二次再建とがあります。一次再建のメリットは
などがあります。デメリットは、
などです。
二次再建は、乳がんの治療がひと段落ついた頃に行いますので、手術の必要性や手術方法をゆっくり決めることが出来ます。また再建された乳房は乳房喪失時期との比較であるため比較的満足度が高いような印象があります。手術回数・費用に関しては一次再建に比べて若干多くなります。
乳房再建の方法には大きく分けて、
があります。
この方法は健康保険が適用にはなりませんので、施設によって行えない場合がありますので確認が必要となります。 組織拡張器(エキスパンダー)を併用する場合と併用しない場合があります。 併用する場合にはシリコン製の風船のようなものを胸の筋肉の下に留置し、徐々に皮膚皮下組織を乳房の形に膨らませて人工乳房に入れ替えます。
組織拡張器は、胸の筋肉の下に入れた後、1-3週間に1回の割合で4-6カ月くらいの期間に外来で生理食塩水を注入して拡張していきます。この手術は胸の手術のみで他の部位に傷がつかない、手術時間が短い、胸の皮膚を拡張するので整容的に優れているなどの優れた利点があります。
組織拡張器と入れ替える人工乳房はシリコンバッグが多く用いられています。とくに、コヒーシブ(固着性)シリコンバッグは破れても中身が外に漏れ出さないように工夫されています。しかし、基本的には人工物ですからときに破損や変形の可能性もあります。その際は再度バッグを入れ替えることになります。
人工乳房による再建の一番の適応は、胸の手術のみで体の他の部位に手術の傷あとをつけたくない場合です。適応とならないのは定型乳房切断術が施行されており、胸の筋肉がない場合です。人工乳房は胸の筋肉の下に挿入することで保護されて安全に用いることが可能です。皮膚直下に挿入した場合には、露出する恐れがあることと、人工乳房の輪郭が明確に出てしまうといった欠点が生じてしまいます。
患者さん自身の身体の皮下脂肪の豊富な部分を胸に移植する方法です。自家組織による再建でも、組織拡張器を併用する場合があります。自家組織の移植法としては、
の2つが代表的な方法です。
この手術法の利点は自分の組織で再建されるため、違和感がなく体型に応じて変化してくれることです。しかし、他の部位から組織が移植されるため、胸と他の部位に傷あとが残ります。


近年では、再建方法が進歩してより美しい乳房が再建できるようになってきました。その結果、乳房切除による喪失感や日常生活の不都合が解消されます。精神的苦痛から開放されることによるQOLの向上が期待できます。乳房再建には言葉では伝えきれない精神面での大きな効果があるようです。
乳房を再建したのち、約6カ月から1年経過してから乳頭乳輪の再建を行います。通常乳頭は、健側の乳頭の一部を利用するか、再建した乳房の一部の組織をつかって作成します。乳輪は鼠径部の皮膚を移植したり、医療用の色素で色を付けたりすることができます。乳頭乳輪の手術は入院しないで行うこともできます。